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★★(513)『おかあさん』 1952年 東宝

香川京子


全国の小学生の作文から着想を得た水木洋子のオリジナルシナリオを映画化した家庭劇。普通の庶民の暮らしを淡々と描いた秀作。成瀬監督の傑作とされる『浮雲』より、自然主義リアリズムに徹しているだけ、こちらが成瀬最高傑作と呼ぶべきだろう。

娘の視点でみた母の生き方がほんとに生き生きと描かれている。戦災で焼け出された家業のクリーニング店を母(田中絹代)は、夫(三島雅夫)と長女(香川京子)とともにふたたび軌道に乗せる。だが、そんな矢先に夫に先立たれ、長男も病気で亡くす。様々な不幸に遭いながらも健気に生きる母親とそれを見つめる娘を繊細に描いている。

田中絹代の演じる「母」がまた素晴らしい。こんなに優しく包容力のある母がいた時代が日本にもあったのかと思うと、それだけでうれしくなる。

成瀬自身が、「狭い日本の部屋の中ばかりで撮っている」と述べているように、この映画もクリーニング屋の店と住居を兼ねた家の中で物語の重要な部分が語られている。

別な意味でも成瀬監督には感謝しなくてはならない。それはこの映画が、50年代の日本の庶民の暮らしと風物をしっかりと記録していることだ。茶の間に丸い卓袱台があり、それを囲んでみなで食事をとる。当然、ご飯はお櫃に入れてある。外に出ると、砂利道!!そして木製の電柱に裸電球の街路灯。映画の中の町並みはセットなのだろうか。それにして温かい風景が広がっている。

いい映画をみた。日本映画の素晴らしさを再認識した。1952年度のキネマ旬報ベストテン第7位に輝いた作品でもある。因みに同じ年の第1位は、黒澤明監督の『生きる』だった。画像は、劇中で花嫁のモデルになった香川京子。

(513)『おかあさん』 1952年 東宝
出演:田中絹代/香川京子/三島雅夫/加東大介
監督:成瀬巳喜男



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